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最高裁判所第二小法廷 昭和56年(行ツ)121号 判決

上告人

新宿郵便局長

渡邊行雄

右指定代理人

藤井俊彦

外一二名

被上告人

川原四郎

右訴訟代理人

山本博

清水洋二

木村晋介

山田雅康

主文

原判決中上告人に関する部分を破棄する。

右部分につき被上告人の控訴を棄却する。

控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理由

上告代理人柳川俊一、同緒賀恒雄、同松永榮治、同水野秋一、同東條敬、同梅村裕司、同松岡敬八郎、同吉田一司、同佐藤啓一郎、同米田昌弘の上告理由について

一原審が適法に確定したところによれば、被上告人は、昭和四六年九月一日、国家公務員法(以下「法」という。)六〇条所定の臨時的任用の職員として採用されて新宿郵便局第二集配課に勤務していたが、同年一〇月二七日から名古屋郵政研修所で初等部前期訓練を受け、右訓練の修了により、同年一一月一四日郵政省事務員(法二条に規定する一般職の国家公務員にあたる。)として採用され、引き続き右第二集配課に勤務していたが、同年一二月九日から昭和四七年一月一八日までの約一か月余りの間に、五回にわたり、再三の上司の指導注意にもかかわらず、配達すべき書留郵便物の通数を確認せずに配達に出発したり、書留配達証に受取人の受領印を徴することなく帰局し、あるいは帰局後の査数確認をすることなく帰宅したりしてしまうなどの事務処理上の過誤を繰り返したほか、同年二月二日及び同年三月八日にも同様の過誤を繰り返し、また、同年一月二五日には、午前九時五分ころ、上司の許可を受けずに職場を離脱し、所定勤務終了時刻である午後四時五分に至るまで勤務をせず、同年三月八日にも、午後三時ころから約三四分間無断で職場を離れ、帰局後注意した上司に対し、「歯医者へ行つて風呂に入つて来た」旨の反抗的返事をするなどし、更に、同日から同月一一日までの間に、四回にわたり配達先から、被上告人が配達の際、郵便物を足で蹴つたり、誤配郵便物を持ち帰るよう要請しても応じないなどといつた趣旨内容の苦情申告があり、右苦情申告について注意した上司に対し、「証拠がない」、「誰がそんなことをいつたか」などと言つて反抗的態度を示したという事実があり、上告人は、同月一八日、叙上の諸事情に鑑み、被上告人に対し、人事院規則一一―四(職員の身分保障)(以下「規則」という。)九条に基づき免職処分をした、というのである。

二原審は、その確定した事実関係のもとにおいて、被上告人に書留郵便物配達上の過誤が数度あつたことは否めないが、配達出発前の局内における書留郵便物の通数確認については、郵便物の授受が局舎四階の第三郵便課特殊係や前記第二集配課の主事との間で数回行われる関係上、被上告人としてはその授受の都度通数確認をしなければならないという事情があること、及び一日の配達郵便量が多く、配達所要時間、交通事情等の関係から配達作業を急がねばならず、しかも郵便物一通ごとに貼布されている書留配達証に受取人の受領印を徴してこれを取り外す作業ははん雑であつて、書留配達証への受領印を徴することやそれを受領して持ち帰ることを忘れることもありがちであつたことからすると、被上告人の配達事務処理上の過誤の原因をもつぱら本人の資質、意欲の欠如等に求めることは妥当でないこと、昭和四七年一月二五日の職場離脱については、退出後間もなく上司に対し電話で早退の連絡をしており、全くの無断職場離脱とはいえないばかりか、右職場離脱は、上司から妥当とはいえない口調で注意されたことが原因となつていること、上告人は、同年二月一日、法八二条に基づき右職場離脱を理由として被上告人に対し戒告処分をしたところ、上告人としては、右処分に際し、被上告人を規則九条により免職すべきか否かをも考慮した結果、結局戒告処分を選択したものとみるべきであり、これによれば、上告人は、それまでの事情一切を考慮しても、被上告人は郵政省事務員としての適格性を有すると判断したものと解されること、被上告人は、同月八日、上告人から本件免職処分についての予告を受けたが、これにより被上告人が受けた精神的衝撃に徴すると、その後被上告人が勤労意欲を失い、上司に対し反抗的態度を示すようになつたのも全く理解できないことではなく、右予告後の勤務上の失態を重要視することは妥当でないこと、そして、被上告人は、前記の二月一日の戒告処分後から同月八日の免職処分の予告までの間は大過なく勤務していたこと等に鑑みれば、本件免職処分は、恣意的であり過ぎ、結果的に厳し過ぎるものであつて、裁量権を濫用した違法がある、との判断を示した。

三1  しかしながら、書留郵便の制度は、書留郵便物の引受から配達に至るまでの記録をしてその配達の確実を図るとともに、送達の途中においてこれを亡失しあるいは毀損した場合は損害を賠償しようとするものであり、郵便制度のなかでも確実な配達が保障されているものであつて、右の確実性に対する国民の信頼が厚いことはいうまでもないところ、このような書留の取扱の趣旨・目的に鑑みると、配達出発前の書留郵便物の通数確認、帰局後の配達証及び持ち戻り郵便物の査数確認は、配達事故を防止するための最も重要かつ基本的な作業というべきものであり、また、書留郵便物が配達先との間で授受されたことを確認する手段として、書留配達証に受取人の受領印を徴することが重要かつ不可欠な手続であることも明らかである。しかも、このことは被上告人において充分認識していたところであるばかりか、右の各作業は、単純かつ基本的作業ともいうべきものであつて、配達出発前における郵便物の授受が局舎四階の第三郵便課特殊係や前記第二集配課の主事との間で数回行われることや一日の配達郵便量が多いことが右の基本的作業を励行するについて支障となるものとはいえないから、被上告人においてその意思さえあれば容易に励行することが可能なものであり、右の事務処理に関する過誤も郵政省事務員に通常要求される注意力をもつてすれば容易に回避できたはずのものというべきである。したがつて、被上告人が前記の事務処理上の過誤を短期間に五回以上も繰り返したことが、被上告人の職務に対する自覚、意欲、責任感等の欠如に基因するものとした上告人の判断に不合理があるということはできない。

2  昭和四七年一月二五日の職場離脱については、被上告人が退出後電話で早退の連絡をしたからといつて、無許可の職場離脱であることに変りはなく、右早退の直前の被上告人に対する上司の注意が多少厳し過ぎると感じられるものであつたとしても、右の職場離脱を軽視してよいということにはならないのであるから、上告人が右職場離脱をもつて本件免職処分の理由のひとつとしていることに不合理があるということはできない。

3  また、法八二条所定の戒告等の懲戒処分は、公務員関係における秩序を維持するという観点から、職員にその個々の義務違反に対する責任を問うものであるのに対し、規則九条に基づく条件附採用期間中の職員に対する免職処分は、職員の採用にあたり行われる競争試験又は選考の結果だけでは職務を遂行する能力を完全に実証するとはいい難いことから、いつたん採用された職員の中に適格性を欠く者があるときは、これを排除し、もつて職員の採用を能力の実証に基づいて行うという成績主義の原則を実現しようとする観点から、その官職に引き続き任用しておくことが適当でないと認められる職員に対しされるものであつて、前記の二つの処分の性質は本質的に異なるものであるから、条件附採用期間中の職員に義務違反行為があつた場合、処分権者としては、当該職員に対し、法八二条所定の免職処分以外の懲戒処分をすると同時に、それ以前の勤務実績をも併せ考慮することによりその官職に引き続き任用しておくことが適当でないと認めたときは、規則九条に基づき免職処分をすることもできれば、必要に応じ、右の免職処分を留保してとりあえず懲戒処分をするにとどめ、その勤務実績をも考慮に入れたうえその適格性の有無を判断することもできるというべきである。以上によれば、処分権者が右職員の義務違反行為に対し規則九条に基づく免職処分をすることなく法八二条所定の免職処分以外の懲戒処分をしたからといつて、直ちに当該職員の適格性を肯定したことにはならないというべきであるから、上告人が昭和四七年二月一日被上告人に対し右職場離脱を理由として戒告処分をしたことをもつて、上告人が、その時点までの事情一切を考慮して、被上告人の郵政省事務員としての適格性を肯定したものと断定するのは相当でない。

4  更に、免職処分の予告を受けた者の受ける精神的衝撃を無視することはできないとしても、右予告後の事実も、それ以前の前記の諸事実との関連において考えると、軽視し難いものといわなければならない。

5  したがつて、前記のような事務処理上の過誤、職場離脱、苦情申告の内容、上司に対する反抗的態度等をも総合勘案すると、被上告人には自己の職務に対する自覚、意欲、責任感等や服務規律に対する認識が欠けているものとして、上告人が規則九条に基づいてした本件免職処分が、裁量権の範囲を超え、これを濫用してされた違法なものであるとすることはできないというべきである。

四そうすると、原判決が本件免職処分には裁量権濫用の違法があるとしたのは、法八一条一項、規則九条の解釈適用を誤つたものであるといわざるを得ず、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

そして、既に説示したところによれば、本件免職処分を違法ということはできず、これを取り消すべき瑕疵はないというべきであるから、本件免職処分の取消を求める被上告人の本訴請求を棄却した第一審判決は正当であり、本件控訴はこれを棄却すべきである。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(大橋 進 木下忠良 鹽野宜慶 牧 圭次 島谷六郎)

上告代理人柳川俊一、同緒賀恒雄、同松永榮治、同水野秋一、同東條敬、同梅村裕司、同松岡敬八郎、同吉田一司、同佐藤啓一郎、同米田昌弘の上告理由

原判決には、経験則違背又は採証法則違反若しくは証拠に基づかずに事実を認定した違法及び条件付採用期間中の国家公務員に対する分限免職処分に関する法令の解釈適用を誤つた違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるので、破棄されるべきである。

第一 経験則違背又は採証法則違反ないし証拠に基づかずに事実を認定した違法について

一 原判決は、上告人(被控訴人)が被上告人(控訴人)を懲戒処分に付したことをとらえ、「控訴人の昭和四七年一月二五日の無許可早退の件(抗弁二の(二)の1)につき、被控訴人局長は、昭和四七年二月一日、控訴人を戒告処分に付したが、その際、右一月二五日の件のほか、二月一日以前の控訴人の勤務成績など一切が考慮の対象となつた(従つて右戒告処分においては抗弁二の(二)の1の事実のほか抗弁二の(一)の2の(1)ないし(5)の事実、抗弁二の(二)の2の事実が考慮の対象となつたことになる。)」(原判決一六丁表三行目から九行目まで)とし、更に、「右処分に際し、被控訴人局長は、より重い懲戒処分である減給処分のほか、人事院規則一一―四第九条による分限免職処分をなすべきか否かをも考慮したが、結局、戒告処分を選択した」(原判決一六丁表一〇行目から裏二行目まで)と認定した上で、「(従つて戒告処分の時点においては、被控訴人局長は、一月二五日の件の非違性は、それまでの過誤などを考慮に入れても戒告処分相応のものであり、またそれまでの事情一切を考慮しても、控訴人は郵政省事務員としての適格性を有する、と判断したことになる。)」(原判決一六丁裏二行目から六行目まで)と説示している。

二 しかしながら、右の「被控訴人局長は、……控訴人は郵政省事務員としての適格性を有する、と判断したことになる。」との原審の認定には、経験則又は採証法則に違反し若しくは証拠に基づかないで事実を認定した違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

(一) 原判決は、右認定部分を前記一において引用したその余の認定事実から当然の如く導いているが、右判断は明らかに経験則に違背するものである。すなわち、

(1) 国家公務員法(以下「国公法」という。)八二条による戒告等の懲戒処分は、職員の服務規律を維持するため、職員にその個々の義務違反に対する責任を問うものであるのに対し、人事院規則一一―四(職員の身分保障)(以下「規則」という。)第九条による条件付採用期間中の職員に対する免職処分は、競争試験又は選考という方法(国公法三六条)によつて採用した職員が、必ずしもその官職に必要な職務遂行能力を有する適格者であるとの保障がないことから、職員の採用を一定期間条件付のものとし、果たしてその官職に必要な職務遂行能力を有する適格者であるかどうかを実際の職務遂行状況から総合的に判断して、不適格者を排除し、もつて職員の採用をより適正ならしめようとした国公法五九条一項の趣旨に基づいて、その官職に必要とされる職務遂行能力を有しないと認められた職員に対しなされるものであつて、両処分の性質は本質的に異なるものである。もとより、懲戒処分の理由とされた事実に基づいて職員の適格性の有無を判断することは許されるものといわなければならない。

(2) したがつて、条件付採用期間中の職員に非違行為があつた場合、処分権者は、右非違行為を理由として免職処分以外の懲戒処分に付するとともに、それ以前の勤務実績をも含めて総合的に判断し、その官職に引き続き任用しておくことが適当でないと認めて分限免職処分に付することもできるし、適格性の有無の判断をするための資料がいまだ十分でない場合は、分限免職処分を留保してとりあえず懲戒処分に付し、その後の勤務実績をも併せ考慮して、適格性の有無を判断することもできるのである。そうであるから、処分権者が、職員の非違行為に対し、懲戒処分に付することを検討し、その際、分限免職処分をなすべきか否かをも考慮したが、結局、戒告処分を選択し、分限免職処分を選択しなかつたからといつて、必ずしも当該職員に適格性があると判断したことにはならないのであり、このことは、右懲戒処分に当たつて、処分の対象となつた非違行為だけでなく、処分日以前の勤務成績など一切が考慮の対象となつた場合であつても同じことである。

(3) しかるに、原判決は、上告人が被上告人を戒告処分に付した時点において、分限免職処分を選択しなかつたということから直ちに、上告人が被上告人について「郵政省事務員としての適格性を有する、と判断したことになる。」と論断しているのであつて、これは、右に述べたところに照らし、明らかに経験則に違背するものといわなければならない。

(二) 更にまた、本件においては、上告人は被上告人の適格性を積極的に認定した上で、被上告人を戒告処分に付したのではなく、その時点においては分限免職処分の可否についての判断を留保し、とりあえず被上告人を戒告処分に付したものであることは、一審証人村田理一の証言により明らかであり、これに反する証拠はない。

しかるに、原判決は右証拠を無視又は看過して、上告人が被上告人を戒告処分に付したことにより、「その時点において被上告人が郵政省事務員としての適格性を有する、と判断したことになる。」と判示しているのであつて、これには採証法則を誤つたか又は証拠に基づかないで事実を認定した違法があるといわざるをえない。

(三) そして、原判決は、右の誤つた判断を前提として、分限免職処分の予告が戒告処分の一週間後になされたことを重視し(すなわち、原判決の論理によれば、戒告処分の時点では被上告人に適格性があると判断しながら、その一週間後特段の重大な事情の変化もないのに分限免職処分の予告をしたということになる)、予告後の事情をほとんど考慮することなく、上告人の本件分限免職処分には、裁量権濫用の違法があると判断しているのであるから、前記の違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

第二 法令の解釈適用を誤つた違法について

一 原判決は、「条件付任用中の国家公務員につき適格性の欠如の徴表たる事実が存する場合、任命権者が右規則九条の分限処分をなすかなさないか、またはなすとしても降任、免職のいずれを選択するかは任命権者の裁量に委ねられており、適格性欠如の徴表たる事実が認められる以上、右裁量が少し位誤つていても、その処分は違法視されることはないが、種々の事情に照らすと処分が著しく恣意的であつたり厳し過ぎるような場合には、いわゆる裁量権の濫用があつたとして、それは違法なものとなる。」(原判決一二丁表二行目から九行目まで)と判示していながら、被上告人の適格性欠如の徴表と認められる各事実(抗弁二の(一)ないし(四)の各事実――各事実の概要は別表記載のとおりである)が認められるにもかかわらず、これらの事実をもつて、上告人が被上告人に適格性なしとして行つた本件処分は、被上告人が条件付任用期間中の職員であること、条件付任用制度の趣旨等を考慮しても、「誤つているばかりか、恣意的であり過ぎ、結果的には厳し過ぎるものであり、裁量権濫用の違法があるといわざるをえない。」(原判決一九丁裏三行目から五行目)として、本件免職処分を取消した。しかし、これは、「適格性欠如の徴表たる事実が認められる以上、右裁量が少し位誤つていてもその処分は違法とされることはない」とする判示に矛盾するばかりでなく、条件付採用期間中の職員の身分保障の本質を理解せず、そのために、上告人の裁量権の範囲を不当に狭く解したもので、国公法八一条一項及び規則九条の解釈適用を誤つたものというべきである。

二 国公法五九条一項は、「一般職に属するすべての官職に対する職員の採用……は、すべて条件附のものとし、その職員が、その官職において六月を下らない期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。」と規定して、条件付採用制度を採用している。

この制度の趣旨、目的は、職員の採用に当たり行なわれる競争試験又は選考の方法が、なお、職務を遂行する能力を完全に実証するとはいい難いことにかんがみ、試験等によりいつたん採用された職員の中に適格性を欠く者があるときはその排除を容易にし、もつて、職員の採用を能力の実証に基づいて行うとの成績主義の原則を貫徹しようとするにあると解される。したがつて条件付採用期間中の職員は、いまだ正式採用に至る過程にあるものということができる(最高裁昭和四九年一二月一七日第三小法廷判決・判例時報七六八号一〇四ページ)。すなわち、正式採用の職員は、その職に必要な適格性を有するものであるとの任命権者による最終的判定をうけたものであるのに対し、条件付採用期間中の職員は、その官職に必要な適格性を有するか否かを検討すべき選択過程の途上にあるものである。それ故、正式採用の職員と同様の身分保障を与えることは、条件付採用制度の本旨に親しまないものであり、正式採用の職員に対する分限処分に比し、不適格事由の判断については、任命権者に、より広範な裁量が認められるべきであることは制度上当然のことである。

そして、正式採用職員と条件付採用期間中の職員との間には、その身分保障に関し実定法上も次のような差異が認められる。

(1) まず、国公法七五条一項は、正式採用の職員については「職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。」と規定して、身分保障の原則を掲げ、同法七八条は、本人の意に反して降任し、または免職し得る場合を、同法七九条は、本人の意に反して休職し得る場合を、それぞれ具体的に定めている。そして、これに対する保障として、同法八九条は、本人の意に反してこれらの分限処分を行おうとするときは、処分者は、当該職員に対し、処分の事由を記載した説明書を交付しなければならないものとし、同法九〇条は、前記処分を受けた職員は人事院に対し行政不服審査法による不服申立てをすることができるものとしている。

しかし、条件付採用期間中の職員の分限については、国公法八一条一項の規定により、同法七五条の規定の適用すら排除するほか、同法七八条ないし八〇条及び八九条並びに行政不服審査法の規定の適用が除外され、国公法八一条二項の規定により、人事院規則で分限に必要な事項を定めることができるものとされており、これを受けて、規則九条は、本人の意に反する降任及び免職の事由を定めている。正式採用職員は、国公法上、積極的に身分を保障されているのに対し、条件付採用期間中の職員は、法律による身分保障を受けておらず、規則九条の定める事由があるとき、すなわち任用継続が適当でないと認められる場合は、何時でもその意に反する分限処分を受けるものとしているのであるから、分限事由が法定されている意味において身分が保障されているといえないこともないが、これを身分保障と称するとしても、正式採用の職員に比して、その権利性は極めて希薄なものというべきである。

このことは、条件付採用期間中の職員に対し、本人の意に反する降任又は免職処分を行なう際には、正式採用職員に対する場合と異なり、処分の事由を記載した説明書を交付する必要がなく、また、被処分者は、分限処分に対し行政不服審査法による不服申立てをすることができないものとされていることに徴しても明らかである。

(2) 次に、本人の意に反する降任及び免職事由の具体的内容についてみると、正式採用職員に関しては、国公法七八条は、

「職員が、左の各号の一に該当する場合においては、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

一 勤務実績がよくない場合

二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合

三 その他その官職に必要な適格性を欠く場合

四 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」

と規定し、これを受けて、規則七条は、

① 法第七十八条第一号の規定により職員を降任させ、又は免職することができる場合は、法第七十二条の規定による勤務評定の結果その他職員の勤務実績を判断するに足ると認められる事実に基き、勤務実績の不良なことが明らかな場合とする。

② 法第七十八条第二号の規定により職員を降任させ、又は免職することができる場合は、任命権者が指定する医師二名によつて、長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によつても治ゆし難い心身の故障があると診断され、その疾患又は故障のため職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないことが明らかな場合とする。

③ 法第七十八条第三号の規定により職員を降任させ、又は免職することができる場合は、職員の適格性を判断するに足ると認められる事実に基き、その官職に急要な適格性を欠くことが明らかな場合とする。

④ 法第七十八条第四号の規定により職員のうちいずれを降任し、又は免職するかは、任命権者が、勤務成績、勤務年数その他の事実に基き、公正に判断して定めるものとする。と規定して、降任又は免職に値いするかどうかの判断は、一定の客観的基準に則つて決すべきことを明らかにしている。

しかるに、条件付採用期間中の職員に関しては、規則九条は、単に、

「条件附採用期間中の職員は、法第七八条第四号に掲げる事由に該当する場合又は勤務実績の不良なこと、心身に故障があることその他の事実に基いてその官職に引き続き任用しておくことが適当でないと認める場合には、何時でも降任させ、又は免職することができる。」

と規定するのみであつて、同条にいう「その官職に引き続き任用しておくことが適当でないと認める場合」の基準を示した規定は全く見当たらないのである。

右のとおり、実定法上も条件付採用期間中の職員の身分保障は、正式採用職員のそれよりもはるかに薄く、しかも質的に異なるものとしているのであり、また、条件付採用期間中の職員が、「その官職に引き続き任用しておくことが適当でない」かどうかの判断は、多くの評価的要素を含むものであり、客観的基準も定められていないため、任命権者の広範囲な裁量に任されているものといわざるをえない。

三 そこで、本件についてみるに、原判決は、上告人が本件分限免職を支持すべき事由として主張する事実全部(抗弁二の(一)ないし(四)の各事実)を認定しているが、右認定事実は次のように評価すべきものであつて、原判決の評価は誤りである。

1 書留郵便配達事務処理上の過誤(別表1ないし5、8及び10の(3)の各事実)について

(一) そもそも書留制度は、書留郵便物の授受を記録上明確にしてその配達の確実を図るとともに、書留郵便物の亡失、毀損についてはその損害を賠償しようとするものであつて、書留配達証が書留郵便物の配達を証明する重要なものであることは多言を要しないところであり、被上告人は、採用時訓練、大口一区における訓練、初等科訓練を受けていた(原判決一八丁裏四行目から一九丁表二行目まで)のであるから、書留郵便物の重要性及びその取扱方法等についても当然指導、訓練を受けており、その重要性等を十分認識していたはずである。

(二) しかるに、被上告人は、昭和四六年一二月九日から昭和四七年一月一八日までのわずか一か月余りの間に、五回にわたり重要な書留配達証の受領を忘れる等書留郵便物配達事務処理上の過誤(別表1ないし5の各事実)を繰り返し、その後も二回同種の過誤(別表8及び10の(3)の各事実)を繰り返しているのである。しかも、被上告人は、別表1の前日にも同様の過誤があり、上司から注意を受けたばかりであつた(原判決五丁裏六行目から一〇行目まで)し、右各過誤の都度上司から注意を受けていた(原判決六丁表四行目から七丁裏九行目まで)のであるから、注意力散漫で、自己の職務に対する自覚や意欲、責任感に欠けていると評価されるのは当然のことである。

それにもかかわらず、原判決が、「書留配達事務処理上の過誤が生ずる原因をもつぱらその従事者の資質、意欲などに求めることは妥当でないように思われる」と説示し、被上告人の行為を不当に軽く評価しているのは、書留制度の重要性、条件付採用制度の本旨を全く無視したものといわなければならない。

(三) なお、原判決は、別表1及び3ないし5について、それぞれの指導調書(乙第四号証、第六ないし第八号証)の記載から、被上告人が上司の注意に対し、「はい、わかりました。」(別表1)、「はい、わかりました。今日、取りに行きます。」(別表3)、「知らなかつたので注意します。」(別表4)、「はい、どうもすみません。気をつけます。」(別表5)と答えていることが認められるとし(原判決六丁表一行目から三行目まで、六丁裏二行目から四行目まで、六行目から八行目まで、七丁表二行目から四行目まで)、右事実から、それぞれの過誤に対する上司の注意に対し、被上告人が「素直な態度を示している」と評価(原判決一四丁裏七行目から一五丁表一行目まで)して、被上告人の適格性判断に当たり、右の「素直な態度」を重視している。

しかしながら、右のような単なる一片の言葉から、被上告人が、真摯な反省悔悟のもとに素直に態度を示したものと評価するのは、あまりにも皮相的な観察であるといわなければならない。現に、被上告人は、右の言辞にもかかわらず、その後も同種の過誤を繰り返しているのであるが、原判決が説示するような状況であるならば、このような事態が生ずるはずはないのである。

また、仮に、上司の注意に対し、被上告人が真摯な反省悔悟の態度を示していたとしても、前記のとおりの書留郵便物の重要性、被上告人に対するその指導教育、これに対する被上告人の認識とその重要な書留郵便物の配達事務処理上の過誤の繰り返しという状況を総合すれば、被上告人は、度重なる指導教育、注意によつても、もはや自己の職務を全うすることができないものと評価せざるを得ないのであるから、その資質、勤労意欲に欠けるものがあるといわなければならないのである。懲戒処分を決定するに当たつては、処分対象者の反省悔悟の態度も考慮することになるが、分限免職処分を決定するに当たつては、その官職に引き続き任用しておくことが適当でないと認められるか否かの観点から判断するのであるから、処分対象者がいかに自己の職務上の過誤に対し、その都度反省悔悟の態度を示していても、その効なく同じ過ちを繰り返す本人の資質、意欲の方が問われなければならないのである。

したがつて、被上告人が上司の注意に対して素直な態度を示したということは、その後も同種の非違行為を犯している状況の下においては、被上告人の適格性の判断に当たつては何ら重要視されるべき事情ではないのである。

2 就労遅延、職場離脱等(別表6、7及び10の(2)の各事実)について

(一) まず、別表6の事実は、被上告人は六時間一五分にわたつて職場を放棄して、結局、その日は職場復帰しなかつたというものであり、同人には、服務規律に対する認識、自己の職務に対する自覚、意欲、責任感等が著しく欠けていると評価さるべきものである。

原判決は、右事実につき、被上告人がとつた行動は、「妥当なものではない」と評価しながらも、職場放棄の二五分後に盛岡副課長に早退したい旨電話連絡したことをとらえ「全くの無断職場離脱(早退)ではなく、届出はなしている」(原判決一五丁表九行目から末行まで)とし、これを被上告人に有利な事情として斟酌しているが、同副課長は被上告人に早退の許可を与えなかったばかりか、直ちに職場に戻るよう命じたのであるから、これに応じなかつた被上告人の行為は、全くの無断職場離脱と変わるところがなく、電話連絡の事実を被上告人に特に有利な事情として斟酌するのは相当ではない。

(二) 別表7の事実は、短時間であるとはいえ、上司に断ることなく、所在不明のまま就労を遅延したものであつて、被上告人の勤務時間に対する基本的認識の欠如をうかがわせるものである。

(三) 原判決は、免職処分予告後の別表10の(2)の四三分間の無断離席については何ら判断を示していないが、この事実は、被上告人の職場規律に対する認識と勤務意欲の欠如を示す重要な事実であるといわなければならない。適格性判断に当たり免職処分予告後の事情をも考慮すべきことは後記3の(二)のとおりである。

3 勤務態度(別表9、10の(1)、11及び12の(2)の各事実)、配達態度(別表10の(4)、12の(1)及び(3)の各事実)について

(一) 勤務態度等の事実は、すべて、分限免職予告後のものであるところ、原判決は、予告後に被上告人が勤労意欲を失い、反抗的になつても、さほど責めるべきでないから、右予告後の被上告人の反抗的態度などを重要視することは酷であり、妥協でない旨説示する(原判決一七丁表七行目から裏三行目まで)。

しかし、右説示は誤りである。すなわち、

(1) 処分権者が条件付採用期間中の職員に対し、分限免職処分をするに当たりその予告をしたとしても、分限免職処分の最終的意思決定は結局のところその発令をもつてなされることになるのであるから、免職処分の予告以後における勤務実績もその最終的意思決定に当たつては、当然考慮されるべきものである。

原判決が説示するように免職処分の予告を受けたものは、勤務意欲を失い、また反抗的になるなどして勤務態度等を悪化させ易いものであるとしても、原判決のようにその影響を一律に考えなければならない必然性はないのであつて(免職処分の予告後のものであることを最大限斟酌しても到底容認できない非違行為も当然存在するのである。)、非違行為の内容との関連も十分考慮されなければならないのであるから、一律に右予告後の事情が適格性判断において重要視されるべきでないとまではいえないはずである。

(2) これを本件についてみると、およそ郵政職員をはじめ国家公務員は国民全体のために奉仕する責務があるのであり、特に直接国民と接触する被上告人のような外務職員は、いやしくも国民に迷惑をかけ、不信を買い、ひいては国の事業及び官職の信用を著しく失墜させるような行為をしてはならないことは当然のことである。

かかる見地からすれば、配達態度に関する別表10の(4)、12の(1)及び(3)は、大切な郵便物を取り扱い、かつ、直接国民と接する郵政省事務員としてあるまじきことであつて、その不当性は到底看過できるものではない。

また、勤務態度に関する別表9、10の(1)、11及び12の(2)は、総合してみた場合、職場全体の規律に直接、間接に関連するものであつて、軽視できないものである。

(二) そして、勤務態度等に関する被上告人の右各行為は、被上告人が上司から再々訓戒されたにもかかわらず、依然として態度を改めないで犯したものであることをも含め被上告人の帯有する公僕として不適格な資質の現れと評価できるものであつて、免職処分予告後の行為であることを考慮に入れても、決して些細なこととして看過できるものではないのである。

更に、無断職場離脱に関する別表10の(2)、書留郵便物配達事務処理上の過誤に関する別表10の(3)の各行為のうち、前者はあまりにも非常識な行為であり、後者は大切な書留郵便物を取り扱う郵政省事務員としての基本的な勤務姿勢に関する事柄で、これまた前記の事情を考慮しても、看過できるものではない。

4 以上の各事実を総合すると、被上告人は、注意力散漫で、自己の職務に対する自覚、意欲、責任感や服務規律に対する基本的認識に欠け、その勤務態度もなおざりであり、郵政省事務員として引き続き任用しておくことが適当でないことは明らかである。

したがつて、上告人が被上告人を免職処分にしたことは正当であつて、その判断が合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なものという余地はないから、裁量権濫用の違法があるとして右免職処分を取り消した原判決は失当である。

四 行政庁の裁量権行使の適否を判断する場合の裁判所の審査方法については、昭和五二年一二月二〇日の最高裁第三小法廷判決(民集三一巻七号一一〇一ページ)がある。同判決は、公務員の懲戒処分について、懲戒権者の裁量権の行使たる懲戒処分は「それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でないかぎり、その裁量権の範囲内にあるものとして違法とならないものというべきである」と判示するとともに「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうかまたはいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではな」い旨の判断を示している。

任命権者の分限処分についても、その判断が合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なものである場合に限つて、裁量権の行使を誤つた違法なものと解される(前記最高裁昭和四九年一二月一七日第三小法廷判決)のであるから、右懲戒処分についての最高裁判決の判示は、分限処分についても当然に妥当するものである。そして、条件付採用期間中の職員については、不適格性の排除といつても、具体的な基準が設けられていない上、どの程度の不適格性があれば任用の継続を不適法ならしめるかは、官職の職務の種類及び複雑と責任の度合に応じて千差万別であるのみならず、分限処分は、その官職に必要な職務遂行能力を有するかどうかの総合判断であつて、その事由は極めて多岐にわたるので、平素から組織の事情に通暁している当該職員の任命権者の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な判断を下すことができないということは、懲戒処分の場合以上に妥当するものである。第三者の立場からする判断が極めて困難であり、それ故に、任命権者の判断が尊重されるべきであることは、条件付採用期間中の職員に対する分限処分が行政不服審査の対象とならないものとされていること(国公法八一条一項)からも裏付けられる。

しかるに、原判決が、本件処分を裁量権濫用の違法があるとしたのは、上告人に巾広い裁量的判断権があることを無視し、裁判所のなすべき審査判断の範囲を超えて処分庁と同一の立場に立つて判断し、裁量の当否にまで立ち入つた違法があるといわなければならない。

別 表

1 昭和四六・一二・ 九 配達済書留郵便物の配達証二枚の受領を忘れた(抗弁二の(一)の2の(1))。

2  同四六・一二・ 五 書留郵便物の通数を確認せずに出発した(右同(2))。

3  同四六・一二・一六 書留郵便物七通の配達証を受領せずに帰局し、持戻り郵便物と配達済郵便物の査数確認をせず、上司の点検を受けないで帰宅した(右同(3))。

4  同四六・一二・二三 台車の上に書留郵便物を放置したまま一時その場を離れた(右同(4))。

5  同四七・ 一・一八 書留郵便物七通の配達証を受領せずに帰局し、査数確認をせず、上司の点検を受けないで帰宅した(右同(5))。

6 昭和四七・ 一・二五 通区訓練者の指導を無視して雑談し、これを注意した上司に反抗的態度を示し、制止を無視して職場を放棄し、六時間一五分にわたり職場を放棄し、その間上司から電話で就労を命じられたのにこれに応じなかつた。(抗弁二の(二)の1)。

7  同四七・ 一・三一 昼休みに歯医者へ行き、上司に無断で昼休み終了後七分間勤務を欠いた(右同2)。

(四七・ 二・ 一 右6の事実について戒告処分)

8  同四七・ 二・ 二 交付された速達書留郵便物五通を放置したまま出発しようとした(抗弁二の(一)の2の(6))。

(四七・ 二・ 八 免職予告)

9 昭和四七・ 三・ 一 空のファイバーを投げ、これに対する上司の注意を無視した(抗弁二の(三)の1)。

10  同四七・ 三・ 八 (1) 両手をズボンのポケットに突つ込み、事務室内をぶらぶら歩き、これに対する上司の注意を無視した(右同2)。

(2) 約四三分間無断離席し、注意した上司に「歯医者へ行つて風呂に入つて来た。」と答えるなどして、反省の色を見せなかつた(抗弁二の(二)の3)。

(3) 書留郵便物二六通を放置したまま出発し、帰局後改めて配達するよう命じられたが、配達証を持たずに出発し、受領の確認をとらないまま配達して帰局した(抗弁二の一の2の(7))。

(4) 配達の際、郵便物を給食箱の上に放り投げたため、弁当をひつくり返したが、謝罪しなかつたのみならず、これを注意した上司に対し反抗的態度を示した(抗弁二の(四)の1)。

11 昭和四七・ 三・ 九 紅色のワイシャツを着用して作業し、上司の注意にも反省の態度を示さなかつた(抗弁二の(三)の3)。

12  同四七・ 三・一一 (1) 配達の際郵便物を足蹴りして郵便受箱に入れたとの申告が配達先からあつたのでこれを注意した上司に、反抗的言辞を弄し、反省を示さなかつた(抗弁二の(四)の2)。

(2) 坐つて作業していたことを注意した上司に反抗的態度を示し、反省しなかつた(抗弁二の(三)の4)。

(3) 配達先二名から、控訴人は、配達の際郵便物を投げること、誤配郵便物を持戻るよう頼んでも無視すること、サンダル、無帽、ノーネクタイで配達することなどについての申告があつた(抗弁二の(四)の3)。

(四七・ 三・一八 本件処分)

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